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Turnaround/Atzko Kohashi+ Yosuke Inoue

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待ちに待った小橋敦子の新作が届いた。彼女のCDには、いつも2つの楽しみがある。ひとつは文学的とでもいうべき、彼女のピアノを聴く楽しみ。もうひとつは、翻訳家でもある彼女の、音楽的とでもいうべき軽妙な文章を読む楽しみだ。文学的な音楽と、音楽的な文章。両者は互いに補完しあい、作品の完成度を高めると同時に、聴く者・読む者に、新たな驚きや発見を与えてくれる。
今回のアルバムは、井上陽介とのデュオ。しかも一発勝負のライブ録音である。長年のニューヨーク生活で、その土地のベース弾き特有の「訛り」をのぞかせる井上の演奏が、小橋のピアノにも自然と作用し、前作とは異なる新たな世界を作り出していく。初顔合わせの緊張感と互いのミュージシャンシップを信頼する安心感。その微妙なバランスが、このアルバムの魅力となっている。小橋が指摘するように、「I Wish I Knew」「Soul Eyes」「Cry Me a River」といったバラードで井上のベースが作り出す空気感が素晴らしい。初期のハンコックを思わせる小橋のブルース「Amstel Delight」で井上は渾身のピチカット・ソロを繰り広げ、会場を大きく沸かせる。70年代のキース・ジャレットのような雰囲気をたたえた「A.F.L.」も、どこか懐かしいそのメロディが優しく響く。録音は2009年11月17日、南青山『Body and Soul』。
小橋敦子のジャズは、いつも優しく、そして暖かい。
WNCJ-2215
by makotogotoh | 2010-12-16 04:11 | 小橋敦子
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