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2017.11.16 Benny Green Trio @ Cotton Club

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今年の春、新作『Happiness! Live at Kuumbwa』(Sunnyside)を出したBenny Green。前作『Live in Santa Cruz!』と同じ場所で収録されたライヴ録音だが、ドラマーがKenny WashingtonからRodney Greenに代わった。今回もその新作と同一メンバーで来日すると思いきや、変更の告知があった。今年の8月、Rodney Greenが抜け、Carl Allenが入ったという。Carl Allenは、長年Benny Golsonのカルテットで定期的に来日。Carl とBennyは35年前、1982年からの知り合いで、26年前、1991年にBenny Greenが結成した最初のTrioのドラマーであり、Blue Note時代の『Greens』『That's Right』『Testifyin'』といったリーダー作に参加した。90年代の前半、2人はFreddie Hubbardのバンドでも共演し、Jazz Futuresなど、多くのRecording Sessionでも起用された。毎年、5月頃に来日しているBennyだが、今年は晩秋。直前にクラブが入る建物(東京ビルTOKIA)の設備トラブルで水漏れが発生、予定されていた3日間公演のうち最初の2日が中止となった。最終日も実現できるか不安だったが、公演体制が整い、全国から新旧のファンが数多く駆けつけた。つまり今年の公演はこの1日限り。Steinwayはトイレ前の通路に移されており、ステージのピアノはYamahaのC3に変更されている。
Bennyは新作のジャケット同様、紫色のネクタイでステージに登場。Carl Allenは文字通りの巨漢。彼の左胸からも同色系のハンカチーフが見える。
最初のセットはミディアム・テンポのSweet Pumpkinで繊細にスタート。最初のみ軽やかだが、徐々に次第に熱を帯び力の入ったソロへ。ピアノ、ベースのソロの後、ドラムとの8小節交換。ラスト・テーマはサビから戻って短く。2曲目の前に、ジャケットを脱ぎ、首元のネクタイも緩める。オリジナルのKenny Drewはマイナー調でしっとりと。ソロはピアノのみ。続いてハンク・ジョーンズの古いオリジナル。ラテン・リズムのイントロからバップ調のメロディ。右手のみによるバップ調の長いライン、フィニアス・ニューホーン張りの両手でのユニゾン。ドラム・ソロを大きくフィーチャー、会場からは大きな拍手が。バラードのSomething I Dreamedは、50年代マイルスの名演のひとつ。ルバートの長いイントロから、イン・テンポ。繊細なタッチでレッド・ガーランドを思わせるブロック・コードで仕上げた。そろそろステージも折り返し点。ここから後半、大きなストンプで、Carl Allenにシャッフル・ビートを合図。フレディ・ハバードのオリジナルと続く。もちろんジャズ・メッセンジャーズ風のサウンドで、ソロはベースのDavid Wongが先発。続いてBennyがBobby Timmons張りのサウンドをエネルギッシュに披露。エンディングはトリオ全体で音量を絞ってフェイド・アウト。続くHumpreyは90年代のBenny Green Trioを知るファンには懐かしいオリジナルだろう。この曲はWalter Davis Jr.に捧げたBennyのオリジナルで、彼の風貌がHumphrey Pennyworthという漫画のキャラクターに似ているところからこのタイトルがつけられた。Duke PearsonはBennyが長年、尊敬&研究しているピアニスト&作曲家のひとり。ベースのパターンで始まる「Lament」は、ドナルド・バードの人気盤『Fuego』に入っているPearsonのオリジナルだ。この知られざる佳曲を内省的に仕上げると、いよいよフィナーレへ。イントロは往年のKeith Jarret風だが、すぐに8ビートのゴスペル・ナンバーとわかる。シンプルな構成だが、途中で転調を何度も繰り返し、Ray BryantやJunior Manceを思わせるブルージーなサウンドで聴衆を魅了。アンコールはWes Mongomeryの速いブルースで終了。

後半のセットは、17年前に書いたというオリジナルでスタート。2曲目は新作『Happyness!』でも取り上げたHorace Silverの名曲へ。こういう曲を取り上げると、ジャズ喫茶の全盛期、Hard Bop黄金時代の熱気が生き生きと蘇る。ピアノ・ソロからセカンド・リフに移って、会場からは大きな拍手が。ドラムとの激しい小節交換も鮮やかに。続いて自作のバラードEnchanted Forrestを繊細に仕上げ、Cedar Waltonのラテン・ナンバーへ。続くWeaver of Dreamsはバラード。ルバートのソロからインテンポでリズムが加わる。さらにCeder Waltonのブルースは急速調。後半はEverybody I Have the Bluesのリフを提示し、ラスト・テーマへ。大きな拍手の後、3曲目のバラードは、なんとIdle Moments。Grant Greenの同名盤で知られるDuke Pearsonの名曲だが、思わず目を閉じて聴いてしまう。最後は再びCedar Waltonのオリジナル。テンポは急速調、テーマも長いが、曲作りのうまさで定評のあるCedarらしい作風。アンコールはBG3に再加入したCarl Allenにちなんだ新しいBlues。Bennyの古いオリジナルにCarl's Bluesという曲があるが、このCarl's Bruiseはそれとは違う新曲。シンプルながら力強いタッチで盛り上げて無事終了。終演後はロビーで新作CDの販売&サイン会。ひとりひとりのファンとの交流を大切にするBennyは、再会を喜び、記念撮影と会話も楽しんでいた。トリオはこの後、韓国ソウルに移動、2日間の公演が予定されている。
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(左から井上智(g),Benny Green(p),金子健(b)。3人はKBS TRIOとして2枚のアルバムをリリース)

BennyGreen(p) David Wong(b) Carl Allen(ds)
1st set:
1.Sweet Pumpkin(Ronnell Bright)
2.Kenny Drew(Benny Green)
3.Minor Contention(Hank Jones)
4.Something I Dreamed Last Night(Sammy Fain,Jack Yellen,Herb Magidson)
5.Down Under(Freddie Hubbard)
6.Humphrey(Benny Green)
7.Lament(Duke Pearson)
8.I Wish I Knew How It Feels to Be Free(Billy Taylor)
Encore:
9.Twisted Blues(Wes Montgomery)

2nd set:
10.Pittsburg Brethren(Benny Green)
11.St.Vitus Dance(Horace Silver)
12.Enchanted Forest(Benny Green)
13.Latin America(Cedar Walton)
14.Weaver of Dreams(John Moon Elliott, Victor Young)
15.The Newest Blues(Cedar Walton)
16.Idle Moments(Duke Pearson)
17.Ground Work(Cedar Walton)
Encore:
18.Carl's Bruise (Benny Green)
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by makotogotoh | 2017-11-17 04:11 | Benny Green
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