2007年 11月 25日 ( 1 )

共同体からの利益を捨てた日本人

a0107397_214249.jpg 中央公論12月号の特集は「一億総クレーマー社会」。内田樹さんの対談「日本人が共同体からの利益を捨てるまで」を読む。
《市民が自分の所属する共同体に「当事者意識」を持たなくなるとき、クレーマーと化す。自己利益の獲得のためには共同体の破壊も辞さない。彼らの登場が、日本の国力低下の元凶なのだ。》
 《競争主義はやめましょう》《「自己利益の追求」は非効率》《退蔵するな。下の世代に回せ》という、内田先生のご指摘はごもっともだし、おっしゃることもよくわかる。だが、最後の結論が「バック・トゥ・ザ・1958」というのは、あまりにも安易すぎる。これだけモノが溢れ、携帯電話が鳴り響くような世の中になってしまった現在、映画『ALWAYS 3丁目の夕日』のような「美しかった日本」に戻れるわけがないだろう。
 日本という国家ほどではないけれど、ジャズもまた、ひとつの共同体なのだと思う。かつて本国で理不尽な差別を受けてきたアフロアメリカンのミュージシャンが初めて日本にやってきた時、自分たちの音楽を「芸術」として認めてくれた礼儀正しい日本人に感動したというケースは多い。1970年の万博で日本にやってきたジョン・サーマンは、当時の日本人の行動を振り返って、「ほとんど英語はしゃべらないけれど、いつもニコニコして、服装や姿勢はきっちりしていて、背筋を伸ばして丁寧にお辞儀をしていた」と語る。それが当時の日本人だったのだ。
 残念ながらジャズの世界でも《自己利益の獲得のための共同体の破壊》は確実に進行している。ネット販売が軌道に乗ったところで、紙媒体への出稿を押さえ、新譜の紹介や再発CDの独占販売など、自分たちでできることはすべて自分たちでやって、利益を独占しようという姿勢がいたるところで見受けられる。商売が大変なのはわかるが、彼らの行動や言動には、お世話になった人たちへの感謝の気持ちなど微塵も感じさせない。こうして日本に根付いてきたジャズという共同体も確実に破壊していく。
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by makotogotoh | 2007-11-25 21:13