2007年 12月 16日 ( 1 )

ブロッサム・ディアリーを大人にした感じ?

a0107397_11344147.jpg 11月21日に発売された『Spotlight on Jacy Parker』(Verve V6-8424)を聴く。《魅惑の女性ヴォーカル・コレクション フィンガー・スナッピン・ミュージック編》のひとつ。
《まるでもうひとりのブロッサム・ディアリー。知られざる美人シンガーの唯一のアルバム!》
これが本当に「もうひとりのブロッサム・ディアリー」なのか?目を閉じた1枚のジャケット写真だけで美人シンガーと断言するのはかなり難しいと思うが……。
さてこの女性、生年・経歴不詳。本名はJaqueline Corinne Parkerというらしい。ピアノをマージョリー・ハイアムズ(vib)に師事。ハイアムズはウディ・ハーマン、レッド・ノーヴォ、ジョージ・シアリングのグループで活躍した女性ヴァイブ奏者(なんでヴァイブ奏者にピアノを習うのか?)5歳でピアノをはじめ、17歳でシカゴで自己のトリオを率いてプロ活動を開始(よってシカゴ出身の可能性が高い)。ジョージ・シアリングの音楽を聴き始めて影響を受け、1954年にニューヨークに進出。ジュリアード音楽院に学び、ニュージャージーのクラブで演奏。クラブのマネージャーだったリー・マジッドが彼女の音楽を聴いて契約。The Left Bank、The Embers、Le Bistro、the Crystal Room、前述のJilly'sといったニューヨークのクラブや、シカゴのBlack Orchidで演奏した。歌を始めたのはニューヨークに来てからというから独学かもしれない。このアルバム、12曲入りなのに、10曲目(It's You or No One)のクレジットが抜けているデータが多い。
 ジャケット写真は『Jilly's Saloon (256 West 52nd Street)』(フランク・シナトラのお気に入りだったピアノ・バー)で撮影された。メンバーうち、ベースのドン・シンデレラはジョー・シンデレラ(g)の兄(弟)。名手アーニー・ロイヤルの参加は終盤の3曲だけで、しかもオブリガードのみでソロはなし。
 日本語ライナーも英文解説の抄訳で新事実はなし。名探偵ビル・リードの登場を期待したいところだ。そして曲解説は相変わらずデータの羅列。これでよいと思っているのだろう。
 さてジェイシー・パーカー、コピーライターはジャケットでブロッサム・ディアリーをイメージしたのだろうが、歌そのものはブロッサムよりクリス・コナーだ。そしてピアニストの腕前はかなり魅力薄だ。歌はパトリシア・スコットよりもジャジー。まあ許せるが、ピアノはホレス・シルヴァー、ラス・フリーマン、ハンプトン・ホーズをさらに野暮にした感じ。Guess Who I Saw Today、Here Comes Trouble Again、My Shipなどバラードを歌った時の情感はよかったです。
PS:「フィンガー・スナッピン・ミュージック編」と名乗る大和田信さん・松永良平さん監修のこのシリーズ、ふたりとも軽音楽系の中古レコード屋さんだけに、アメリカで安価で大量に買い付けられそうな内容(=一時期に大量に売れ、その後売れなくなった流行性の高いもの)のものが多いように思う。わたしがいろいろ教えてもらったジャズ専門の廃盤屋さん、ジャズ・ヴォーカル専門の廃盤屋さんが価値を見出さない、無視してきた作品がほとんどだ。作品や音楽に対する彼らの視点やテイストは、ジャズ屋のそれとは随分違うのでかなりの注意が必要だ。
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by makotogotoh | 2007-12-16 03:35