2007年 12月 26日 ( 1 )

これであなたも「専門家」?

a0107397_9492390.jpg 佐々木俊尚さんの『3時間で「専門家」になる私の方法』(PHP)を読む。
《佐々木俊尚です。 今回、私がITの世界を取材する際、リサーチをどのように行っているのかという、その手法を明らかにする本を書いてみました。 ここまで書いてしまって「なんだ、佐々木はこんな仕事のやり方をしているのか」と思われてしまったらどうしようとも思ったのですが、結果的には勢いに乗って全面開示です。 もしよろしければ、読んでみてください》
《ネットを活用すれば、かつては途方もない作業が必要だった「情報収集」が、3時間でできるようになった。その実践的な方法を全公開!》

 『フラット革命』が元新聞記者らしく綿密な取材に基づく時間をかけたノンフィクションだったのに対し、こちらは「たった3時間で、お手軽に読んでもらうことを目的としたハウツー本」である。こちらの期待が大きすぎたのかもしれないが、日々ネットを使っている人なら誰もが知っている当たり前のことを、わざわざ具体例をあげながら、ダラダラ書いているだけで、佐々木さんの本にしては非常に内容が薄い。
 今のようにインターネットがなかった頃、情報収集のソースといえば、図書館と新聞だった。どちらも、まず情報を蓄積する作業からスタートした。梅棹忠夫、立花隆、野口悠紀雄らの名前をあげ、いずれも蓄積した情報からいかに効率よく検索するかを述べた。しかしネット時代では、情報は蓄積するのではなく検索するものであるという。
 たしかにネットによる検索は便利だ。しかしそこで得た情報が絶対的に正しいとは限らない。いくらグーグルがネット内にある情報をすべて可視化するという目標をもっていても、いまだにネットに落ちていない有益な情報もたくさんある。
 スタンダードの楽曲について全く無知な人間でも、検索エンジンを使って、ひと通りの知識を得れば、それを書くことはできる。しかし作詞者と作曲者を間違えるミスや、同姓同名のミュージシャン(たとえばカール・パーキンス、ビル・エヴァンス)を混同するケースだって起こりうるだろう。いったいその間違いについて、誰が責任をとるのか。
 またたった1枚のアルバムだけを発表して消息不明となった女性歌手について、ネットで検索しても何も情報が得られないケースがほとんどだ。こういうことがあるから、ビル・リードみたいな探偵が必要なのだ。

 内容が薄いと書いたが、それでもさすがは佐々木さんらしく、収穫はある。《ブログからは書き手の実感や本音がみえる》という。でもわたしがたまに訪問するブログは、どうでもいい日記と、生半可な知識による思い込みがほとんどだ。匿名による掲示板にも、クオリアとセレンディピティの話も出てくる。ただこの本、情報の集め方について詳しく書いているが、集めた情報をいかに取捨選択し、どういう情報を発信するかについては、何も書いていない。情報を集めるだけでは、レコードのコレクターと同じだ。独自の視点で、情報を発信できない限り、プロの「専門家」とはいえない。

 どこかの出版社で『3時間でジャズ評論家になる私の方法』『1時間でCD解説を書きあげる私の方法』『音楽を聴かずして解説を書く私の方法』という本を出しませんか。もちろん私は無理です。しかし、あの人ならきっと書ける!という名前がすぐ浮かびました(笑)。
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by makotogotoh | 2007-12-26 12:48