すばらしくきれいなラストシーンが待っている(長沼節夫)

 ウォン・ウィンツァンが音楽を手がけた映画『純愛』を銀座シネパトスでを観る。平日の1回目(11時20分)だというのに年輩の女性が多い。レディース・デイ(女性1000円)だ。 ストーリーやエピソードについては、あちこちのサイトにあるが、そのなかで書き手の愛情が感じられるこの紹介文が、一番しっくりきた。
《(前略)小林さんは映画作りの資金がたまるたびに、中国での「希望小学校」づくりやセイロンなどアジア各地での小学校づくりを優先して資金カンパを続けていたのだ。さらに小林さんは映画「純愛」ホームページで、「映画の収益金の一部は学校づくりの基金に回し、一人でも多くの子供が夢をかなえるための学校へ行く機会を増やしたい。『純愛』の完成はゴールでなくスタートです」と書いている。すばらしくきれいなラストシーンが待っている。一人でも多くの方に見て欲しいおすすめ映画だ。》
 終演後、館内が明るくなると、スクリーンの前にひとりの女性が。市川慶子さんという方だ。上映期間が延長、14日まで公開となった。
 映画の場合、ヒット作や話題作の多くは、公開から一年足らずでDVD化される。最近ではDVDの売り上げも見込んで制作される映画も少なくない。しかし『純愛』のような映画には、現代人の感覚では残念ながら商業性がないとされる。DVDではなく、やはり劇場の座席で見たい映画だ。
 市川さんの挨拶の後に驚いたことに主演の2人も登場、少しだけ顔を見せた。通常、映画の舞台挨拶といえば、初日くらいのものだ。
 この映画を見てプロデューサーで主演女優で、この映画を作るために法人組織を作り、その理事長でもある小林桂子さんに興味をもつ。公式サイトの記述はこうだ。
《日本では、テレビドラマや舞台などで、幅広く活動。 1997年『戦後50年日中友好訪中団』の一人として、中国の舞台に出演したことをきっかけに、中国中心の芸能活動に専念。 主演作に、北京中央電視台『黒森林』など。 1999年、中国残留婦人の人生を描いた日中合作映画『純愛』の制作プロジェクトをスタートさせる。 同時に、教育を受けられない中国の子供たちのための学校建設にも注力。 2004年4月2日、中国泰山に小林桂子基金希望小学校が開校》。
 しかし年齢は?他の出演作品は?経歴は?実はよくわからない謎の人物である。
 いろいろ調べると、年齢は30代後半、本業は代官山で美容院を経営するエスティシャンらしい。「年齢不詳の美人」という不思議な説明にも納得した。
その一方で、これまでの彼女の活動に対する批判的なサイトもみつかった。
1999年8月、この映画のための資金集めを告知したサイトはこちら
 8年という歳月をかけ、1億円の制作費を集めて作られたたたこの映画は、最新のCG、SFXを駆使したハリウッドの話題作のように、全国一斉公開され、終わるとすぐにDVD化される「消費型・娯楽型形の映画」ではない。観る者の心に、さわやかな印象をしっかりと焼き付けてくれる、そんなタイプの映画だ。東京での公開を終えたら、全国の地方都市をゆっくりと順番に回って、単館上映されていくのだろう。
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# by makotogotoh | 2007-09-06 12:49

ビル・チャーラップがキャロル・スローンの誕生日にプレゼントした本

a0107397_8401078.jpgキャロル・スローンのブログSloanViewより
I want to recommend a book given to me on my birthday by Bill Charlap. "Easy To Remember, The Great American Songwriters and Their Songs" by William Zinsser, David R. Gordine, Publisher. It's a delightful book filled with insight and humor and for me, it's the perfect summer read. Thanks Bill. And thank you Mr. Zinsser.
ウィリアム・ジンサー(1922~)は、作家・編集者・教育者。New York Herald Tribuneのジャーナリストとしてデビュー、脚本家、映画評論家としても活躍。2001年に出版されたこの本は、20世紀のアメリカを代表するポピュラー・ソングの作曲者・作詞者たちの魅力を、単なる経歴紹介ではなく、生き生きと語る。貴重な肖像写真やシートミュージック(楽譜)のカラー表紙も掲載、知られざるエピソードが満載、知らない曲名をみつけたら、ちょっと探して聴いてみようかな、という気分にさせてくれる。
ユニークなのは巻末に記された「Songs by Category」。これはTime(時間)、Meteorology(気象学)The Sesons(季節)、Place(地名、場所)など、有名なスタンダードをカテゴリーで分類したリストだ。記されているのは、楽曲のタイトルだけのリストだが、アルバムを制作する際のテーマ決めにも大いに参考になる。
 なおASCAPが選んだ《20世紀でもっとも頻繁に演奏された楽曲とミュージカル作品ベスト25》は以下の通り。
Happy Birthday to You (Mildred J.Hill and Patty Hill)
Tea for Two (Vincent Youmans and Irving Caesar)
Moon River (Henry Mancini and Johnny Mercer)
Over the Rainbow (Harold Arlen and E.Y.Harburg)
White Christmas (Irving Berlin)
Hello,Dolly! (Jerry Herman)
As Times Goes By (Herman Hupfeld)
Blue Moon (Richard Rodgers and Lorenz Hart)
Rhapsody in Blue (George Gershwin)
Night and Day (Cole Porter)
Santa Claus Is Coming to Town (J.Fred Coots and Haven Gillespie)
Misty (Errol Garner and Johnny Burke)
Raindrops Keep Fallin' on My Head (Burt Bacharach and Hal David)
Mack the Knife (theme from "The Threepenny Opera")Kurt Weill and Mark Blitzstein
Unchained Medley (Alex North and Hy Zaret)
The Christmas Song ("Chestnuts roasting") Mel Torme and Robert Wells
Sweet Georgia Brown (Ben Bernie,Kenneth Casey and Maceo Pinkard)
Winter Wonderland (Felix Bernard and Richard B.Smith)
I Left My Heart in San Francisco (Douglass Cross and George C.Corey,Jr.)
I Only Have Eyes for You (Harry Warren and Al Dubin)
I Got Rhythm (George and Ira Gershwin)
The Way You Were (Marvin Hamlisch and Alan & Marilyn Bergman)
Stardust (Hoagy Carmichael and Michel Parish)
I Cound Have Danced All Night (Frederick Loewe and Alan Jay Lerner)
That Old Black Magic (Harold Arlen and Johnny Mercer)
知っている曲はいくつありましたか?

このうち「Happy Birthday to You」を書いたミルドレッド・ヒルとパティ・ヒルは、ケンタッキー州ルイヴィル幼稚園と日曜学校で教えていた姉妹。もともとこの曲は1893年に「Good Morning to All(You)」というタイトルだったが、1935年に誕生日用の歌詞をつけて「Happy Birthday to You」として著作権登録された。

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# by makotogotoh | 2007-09-05 08:42

批評という行為

(昨日の続き)
私の場合、一般の読者から届く声でもっとも多いのは、間違いの指摘とお叱りの言葉だ。しかし、レビューやライナーノーツを読んだ演奏者や製作者から、手紙やメールで嬉しい感想をもらうことがある。「こちらの意図が理解してもらえた」「ちゃんと聴いて書いてくれたんですね」というコメントがあると、レビュアー冥利につきる。

 再び東良さんの日記より。「批評という行為」について。
《(前略)たとえAVとは言え、誰がが作ったものに関しては最大限に気を使う。だいいちに自分は、少なくはあるがそうやってギャラを戴いている者なのだ。(中略)批評という行為には自ずとリスペクトという観念が伴う。ネット等によくある匿名のカスタマーズレビュー、ユーザーズレビューが、究極的に意味を持たないのはそこだ。「俺は金を払ったから」という非常に些末な理由に頼り切ったうえでものを言っているからだ。この際だからハッキリ言っておこう。オレは、小金を払って「良い悪い」と言ってるわけではない。自分の生活、物書きとしての生き方、そしてたいして高くはないがギャラを貰ったうえで批評をしている。命をかけているというのはその意味だ
 音楽とAVでは、批評の対象は全く違うが、言わんとすることはよくわかる。

 ギャラの多寡に関係なく、東良さんはAV批評という(世間的にはちょっと、と思われるような仕事であっても)、自分の仕事に「誇り」を持っている。
 その仕事が「好き」とか「嫌い」という単純なレベルの話ではない。
仮に避けて通りたい「嫌な」仕事であっても、誠心誠意取り組むことから、その仕事に対する誇りが生まれる。自分の作品に自信があるから、誇りを感じるから、それを観た人、聴いた人、読んだ人から感謝された時に嬉しいと感じるのだ。
 いま世の中に蔓延しているのは嫌な仕事に直面すると、すぐ逃げ出す無責任さと、「お金を出したもの(消費者)が一番偉い。お金さえだせば何を言っても許される」という大いなる勘違いだ。

 社会のあちこちで見られるようになった理不尽な行動や要求は、この無責任と勘違いに、少なからず関係している。
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# by makotogotoh | 2007-09-04 07:03