クラブ・ジャズDJは、21世紀のジャズ啓蒙家となるか?

a0107397_11373360.jpg 沖野修也さんの『クラブ・ジャズ入門』(リットーミュージック)を読む。沖野さんは1967年生まれのクラブDJ&プロデューサー、渋谷で自分のクラブ『The Room』も経営する。
《世界初、クラブ世代のための「踊れるジャズ」論 ここ数年、クラブ・ミュージックの中で最も大きな潮流の1つとなっている「クラブ・ジャズ」。クラブ・ジャズ関連のパーティに多数の集客があり、数々のコンピレーションやミックスCDがリリース、メディアでも盛んに特集され、シーンは確実に発展しています。しかし、その反面、実際にはどんな音楽をクラブ・ジャズと呼ぶのか、いまだはっきりとした定義がなされておらず、決して正しい理解はされていないのが現状です。そこで本書では、クラブ・ジャズ界の第一人者である沖野修也(KYOTO JAZZ MASSIVE)が、クラブ・ジャズを構成する要素を整理し、シーンの全貌を分かりやすく紹介。クラブ・ジャズの定義にはじまり、その歴史、分類、リアル・ジャズや他ジャンルの音楽との関係、ジャズDJの選曲、楽しみ方までを、平易な言葉で解説します。また、巻末には前後にプレイされる選曲例付きのディスク・ガイド、さらに詳細な分類図、歴史年表を掲載し、クラブ・ジャズをより立体的に理解可能。過去と現在をつなぎ、あるいは国境を越えて広がりを見せるユニークな音楽の魅力を、余すところなくお伝えします》

 この本は1985年にロンドンで始まった《踊れるジャズ》のブームから、現在に至るまでのクラブ・ジャズの流れを、DJである彼の視点でまとめたものだ。雑誌の特集などでクラブ・ジャズが取り上げられることは何度もあったが、一冊にまとめられた書物は存在しなかった。だから沖野さんは、この本をある種の使命感をもって書き上げた。《クラブ・ジャズというものをだれかがきちんと説明しないと、その魅力を正しく人々に伝わらないのではないかと不安(10ページ)》になり、《休日を返上し、睡眠時間を削って書いた》そうだ。その意味では力作である。

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# by makotogotoh | 2007-11-14 12:39

外資系大型店では絶対にありえない光景。

a0107397_1322711.jpg 足を運んだ人が必ずびっくりするほどの小さな店を35年前に開いたこの店主は、もぐらのような生活を続けて現在61歳。「花の年金生活まで、もうすぐですね」というと、「いや本当はさ、もうもらえるけどさ、まだ我慢しているんだ」と苦笑い。「さすが老舗、珍しいレコードがいっぱい並んでいますね」「いやぁ売れないから、こんなに残っているんだよ」と再び苦笑い。
 「ねぇせっかく来たんだから、これ買っていきなよ」といって、壁に飾ってある10万円以上の原盤を薦める。いやぁ、昔から何も変わっていない。初対面でもこういう会話をするから、クラブ世代の若いファンには敷居が高いのかもしれない。「そういえばこの前、大手レコード会社の社長がお忍びで来てさ、最近のジャズ担当者はものを知らないので、今度来させます、ってさ」。
 かつてのレコード店は、欲しいモノを探し、買うだけではなく、なにげない会話を楽しむ場でもあった。そしてジャズのレコード店には、こうした名物店主が必ずいた。探しているアルバムがあれば、今度入ったら連絡するよ、といわれたり、レコードを見るときのマナーがなってない素人客には厳しく注意した。
 客が3人も入れば超満員という、穴倉のようなこの店に、突然50歳代の外国人が来店した。店主は日本語は流暢だが、英語はしゃべれない。もちろん外人は日本語ができないので、突然通訳になる。少し質問するとその外人、日本は初めてなのだという。彼は日本でしか手に入らない(今や日本のファンが見向きもしない)レコードを選んでいく。店主はそれら商品を手際よく包むと、電卓を叩く。えーい、端数はおまけだぁ、という店主。私が値引きしてもらったわけではない。だが、こういうやりとりをみると、なぜかうれしくなる。人間としての感情の機微が感じられるからだ。商品知識のないアルバイトがただ何もいわず商品をバーコードリーダーを通し、マニュアル通りの接客をする。すべてが効率化され、システム化された外資系大型店で、端数はおまけする、なんて、絶対に見られない光景だ。
 売る側と買う側。立場は違っても、ともにジャズを愛する仲間だ。ジャズの愛好家は世界中にいるといわれるが、初めて訪れた異郷の地で彼らが憩いと安らぎを感じるのは、こうした「仲間」のいる場所なのかもしれない。
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# by makotogotoh | 2007-11-13 12:42

名ドラマーが語り、実演してみせたジャズ・ドラムの歴史と芸術

a0107397_12285379.jpg《Jazz Hot休刊》のニュースを書いたら、早速あるフランス人が
BULLETIN DU HOT CLUB DE FRANCEJAZZ CLASSIQUEは健在だ」と言われた。
 フランスのジャズ・ジャーナリズムについて正直なところ、その現状はよくわからない。だが世界のグローバル化が進めば進むほど、それまで地域や言語の違いによって守られていたさまざまな権益が守られなくなってきているのは事実だ。『Jazz Hot』は、歴史と権威を誇るジャズ雑誌であったために、世の中の変化が見えなくなり、その変化が適応できなくなっていたのだろうか。
 さてごく最近、偉大なる名ドラマー、ジョー・ジョーンズ(1911~8
1973年2月にニューヨークで録音した『The Drums by Jo Jones』(Jazz Odyssey 8)が、多くの未発表演奏を追加してCD化(Jazz Odyssey Records JOCD03)されていたことを知る。ちなみに、このアルバム、2006年フランス・ホット・クラブがグランプリに選んだ重要作品である。
 内容はジョーンズが自分が見聞した伝説のドラマーや、ドラム演奏の技術について実演&解説してみせている。ジャズ・ドラムを志すアマチュア・ミュージシャン向けの教則CDといった内容だが、影響を受けたドラマーについて各奏者の特徴を説明しながら、実演してみせるのが非常に興味深い。まさに《偉大なる巨匠の語りと実演で聴くジャズ・ドラム芸術の世界》だ。解説はジョーンズの話す英語とその対訳(フランス語)がついている。ジャズ・ドラムの歴史に興味のある方、アマチュア・ドラマーにもオススメしたい2枚組である。
 入手希望者は以下の連絡先まで。
Jazz Odyssey Records,1, rue des Planchettes,15 100 Saint-Flour/France tel/fax 04 71 60 24 04
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# by makotogotoh | 2007-11-12 12:35