宣伝とセットにお金をかけても、いい映画ができるとは限らない。

連日銀座。東映本社7階の第1試写室で11月公開の『オリヲン座からの招待状』を観る。浅田次郎原作のベストセラー『鉄道員』(集英社)に所収され、映画化が熱望されていた短編だ。
 《舞台はひっそりと佇む京都の小さな映画館《オリヲン座》。亡き夫の遺志を受け継ぎ、映画の灯を灯し続けたトヨ(宮沢りえ)と、彼女を支え一緒にオリヲン座を守り続けた留吉(加瀬亮)の二人の愛の奇跡を描く。メイン・テーマは上原ひろみが担当。
(中略)映画館の中は、閉館された実際の映画館を使用、映写室には当時の映写機を運び込み、二人が大切にしてきた映画館のリアリティにこだわって撮影。(中略)時代に翻弄されながらも映画館を守り続けたふたりの純愛――優しい奇跡の物語。この秋、心を揺さぶる、大人のラブ・ストーリー》(プレスリリースより)
 主人公が映写技師、時代の娯楽としての映画が衰退していくあたりは、どこか『シネマ・パラダイス』を思わせる。『無法松の一生』、『二十四の瞳』など、日本映画史に残る名画のワン・シーンがいくつも引用され、映画好きには嬉しい1作ではあろう。知名度や話題性のある俳優を起用、セットや時代考証にも十分すぎるお金をかけた。読んでいないので判らないが、浅田の短編小説としては泣けるストーリーなのかもしれない。
 しかしこの映画、肝心の部分がダメだ。まず宮沢りえと加瀬亮の演技がダメ。若手としては嘱望されている2人だそうだが、戦後の厳しい時代を生き抜いた人生の年輪が感じられない。今でも可憐さを残す宮沢の演技には、未亡人としての悲哀が出てこない。この2人、いつまで経っても無邪気な少年少女のようだ(そう思ってみると、微笑ましい)。
 次に音楽。上原が弾くピアノのメロディは美しく切ない。彼女らしさもよく出ている。だがどんなメロディを弾いても、今のジャズになっていまい、この映画に必要な寂寥感やノスタルジックな昭和の香りが全く伝わってこない。また盛り上がるべきシーンで印象に残る音楽が流れない。戦後の昭和を知らない世代の上原を起用するとは明らかな人選ミスである。だから宇崎竜童、原田芳雄、中原ひとみといったベテランが出るだけでスクリーンが引き締まる。宮沢(1973~)と加瀬(1974~)のシーンは、青春映画のようで、なんかぬるいのだ。
 『ALWAYS 三丁目の夕日』もそうだったが、単なる昭和ノスタルジーであったり、セットや時代考証にお金をかければ、いい映画ができるのではない。映画制作に必要なのは、まずは観るものを唸らせるだけの俳優の演技力、その演技力を最良の形で引き出せる監督の力量。そして音楽も重要な要素だ。前日に見た『純愛』の方が、はるかにスケールが大きく、音楽も映像とマッチしていた。
テレビの2時間ドラマ級の映像を、大きなスクリーンで見たいという人にはいいかも。11月3日全国東映系ロードショー。
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# by makotogotoh | 2007-09-07 08:37

すばらしくきれいなラストシーンが待っている(長沼節夫)

 ウォン・ウィンツァンが音楽を手がけた映画『純愛』を銀座シネパトスでを観る。平日の1回目(11時20分)だというのに年輩の女性が多い。レディース・デイ(女性1000円)だ。 ストーリーやエピソードについては、あちこちのサイトにあるが、そのなかで書き手の愛情が感じられるこの紹介文が、一番しっくりきた。
《(前略)小林さんは映画作りの資金がたまるたびに、中国での「希望小学校」づくりやセイロンなどアジア各地での小学校づくりを優先して資金カンパを続けていたのだ。さらに小林さんは映画「純愛」ホームページで、「映画の収益金の一部は学校づくりの基金に回し、一人でも多くの子供が夢をかなえるための学校へ行く機会を増やしたい。『純愛』の完成はゴールでなくスタートです」と書いている。すばらしくきれいなラストシーンが待っている。一人でも多くの方に見て欲しいおすすめ映画だ。》
 終演後、館内が明るくなると、スクリーンの前にひとりの女性が。市川慶子さんという方だ。上映期間が延長、14日まで公開となった。
 映画の場合、ヒット作や話題作の多くは、公開から一年足らずでDVD化される。最近ではDVDの売り上げも見込んで制作される映画も少なくない。しかし『純愛』のような映画には、現代人の感覚では残念ながら商業性がないとされる。DVDではなく、やはり劇場の座席で見たい映画だ。
 市川さんの挨拶の後に驚いたことに主演の2人も登場、少しだけ顔を見せた。通常、映画の舞台挨拶といえば、初日くらいのものだ。
 この映画を見てプロデューサーで主演女優で、この映画を作るために法人組織を作り、その理事長でもある小林桂子さんに興味をもつ。公式サイトの記述はこうだ。
《日本では、テレビドラマや舞台などで、幅広く活動。 1997年『戦後50年日中友好訪中団』の一人として、中国の舞台に出演したことをきっかけに、中国中心の芸能活動に専念。 主演作に、北京中央電視台『黒森林』など。 1999年、中国残留婦人の人生を描いた日中合作映画『純愛』の制作プロジェクトをスタートさせる。 同時に、教育を受けられない中国の子供たちのための学校建設にも注力。 2004年4月2日、中国泰山に小林桂子基金希望小学校が開校》。
 しかし年齢は?他の出演作品は?経歴は?実はよくわからない謎の人物である。
 いろいろ調べると、年齢は30代後半、本業は代官山で美容院を経営するエスティシャンらしい。「年齢不詳の美人」という不思議な説明にも納得した。
その一方で、これまでの彼女の活動に対する批判的なサイトもみつかった。
1999年8月、この映画のための資金集めを告知したサイトはこちら
 8年という歳月をかけ、1億円の制作費を集めて作られたたたこの映画は、最新のCG、SFXを駆使したハリウッドの話題作のように、全国一斉公開され、終わるとすぐにDVD化される「消費型・娯楽型形の映画」ではない。観る者の心に、さわやかな印象をしっかりと焼き付けてくれる、そんなタイプの映画だ。東京での公開を終えたら、全国の地方都市をゆっくりと順番に回って、単館上映されていくのだろう。
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# by makotogotoh | 2007-09-06 12:49

ビル・チャーラップがキャロル・スローンの誕生日にプレゼントした本

a0107397_8401078.jpgキャロル・スローンのブログSloanViewより
I want to recommend a book given to me on my birthday by Bill Charlap. "Easy To Remember, The Great American Songwriters and Their Songs" by William Zinsser, David R. Gordine, Publisher. It's a delightful book filled with insight and humor and for me, it's the perfect summer read. Thanks Bill. And thank you Mr. Zinsser.
ウィリアム・ジンサー(1922~)は、作家・編集者・教育者。New York Herald Tribuneのジャーナリストとしてデビュー、脚本家、映画評論家としても活躍。2001年に出版されたこの本は、20世紀のアメリカを代表するポピュラー・ソングの作曲者・作詞者たちの魅力を、単なる経歴紹介ではなく、生き生きと語る。貴重な肖像写真やシートミュージック(楽譜)のカラー表紙も掲載、知られざるエピソードが満載、知らない曲名をみつけたら、ちょっと探して聴いてみようかな、という気分にさせてくれる。
ユニークなのは巻末に記された「Songs by Category」。これはTime(時間)、Meteorology(気象学)The Sesons(季節)、Place(地名、場所)など、有名なスタンダードをカテゴリーで分類したリストだ。記されているのは、楽曲のタイトルだけのリストだが、アルバムを制作する際のテーマ決めにも大いに参考になる。
 なおASCAPが選んだ《20世紀でもっとも頻繁に演奏された楽曲とミュージカル作品ベスト25》は以下の通り。
Happy Birthday to You (Mildred J.Hill and Patty Hill)
Tea for Two (Vincent Youmans and Irving Caesar)
Moon River (Henry Mancini and Johnny Mercer)
Over the Rainbow (Harold Arlen and E.Y.Harburg)
White Christmas (Irving Berlin)
Hello,Dolly! (Jerry Herman)
As Times Goes By (Herman Hupfeld)
Blue Moon (Richard Rodgers and Lorenz Hart)
Rhapsody in Blue (George Gershwin)
Night and Day (Cole Porter)
Santa Claus Is Coming to Town (J.Fred Coots and Haven Gillespie)
Misty (Errol Garner and Johnny Burke)
Raindrops Keep Fallin' on My Head (Burt Bacharach and Hal David)
Mack the Knife (theme from "The Threepenny Opera")Kurt Weill and Mark Blitzstein
Unchained Medley (Alex North and Hy Zaret)
The Christmas Song ("Chestnuts roasting") Mel Torme and Robert Wells
Sweet Georgia Brown (Ben Bernie,Kenneth Casey and Maceo Pinkard)
Winter Wonderland (Felix Bernard and Richard B.Smith)
I Left My Heart in San Francisco (Douglass Cross and George C.Corey,Jr.)
I Only Have Eyes for You (Harry Warren and Al Dubin)
I Got Rhythm (George and Ira Gershwin)
The Way You Were (Marvin Hamlisch and Alan & Marilyn Bergman)
Stardust (Hoagy Carmichael and Michel Parish)
I Cound Have Danced All Night (Frederick Loewe and Alan Jay Lerner)
That Old Black Magic (Harold Arlen and Johnny Mercer)
知っている曲はいくつありましたか?

このうち「Happy Birthday to You」を書いたミルドレッド・ヒルとパティ・ヒルは、ケンタッキー州ルイヴィル幼稚園と日曜学校で教えていた姉妹。もともとこの曲は1893年に「Good Morning to All(You)」というタイトルだったが、1935年に誕生日用の歌詞をつけて「Happy Birthday to You」として著作権登録された。

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# by makotogotoh | 2007-09-05 08:42