Echoes @ OverSeas

久しぶりに『Echoes』のライブに足を運ぶ。「Echoes」とはピアノの寺井尚之と、ベースの鷲見和広のデュオ・チームの名称。毎週水曜、長年にわたって共演を重ねてきたレギュラー・ユニットだけに、音楽による対話の面白さと、ベテランの漫才コンビを彷彿とさせる「阿吽の呼吸」が、このチームの醍醐味である。残念なことに、最終セットしか観ることができなかったが、「In A Mellow Tone」では、エリントンが書いた他曲のメロディを楽しく引用したかと思えば、Sir Roland Hannaの「Enigma」ではロマンあふれる原曲の旋律に、激情をこめたベース・ソロを繰り広げ、「You've Changed」ではいつも「よろしく」といっていた某会長の不在とビリー・ホリデイの切なさを歌い、ラストの「Denzil's Best」ではジョージ・ムラーツ張りのテクニックと組めども尽きぬ歌心で魅了した。時節柄の「Summertime」や、「You and the Night and the Music」、「Softly As in a morning Sunrise」の自然な引用は想定内だったが、まさかの「ゲゲゲの鬼太郎」まで出てきた時には、思わず笑ってしまった。正確なイントネーションを要求されるビ・バップの難曲から、知られざるスタンダードまで、楽曲に関する卓越した知識と豊富な語彙をもつ鷲見和広は、関西屈指のジャズ・ベーシストである。最近はソロ・パフォーマンスにも挑戦中という。歌心溢れる超絶技巧のジャズ・ベースを聴きたい人は、ぜひ一度、彼の腕前をチェックされることをお薦めする。