そろそろ書いておかないと忘れそうなので、11月4日、ウォン・ウィンツァンのコンサートを振り返る。曲目はこちら。
夜型のウォンさんにとって、13時30分開始は「おはようございます」の時間なのだそうだ。今回は「遥かなる記憶を辿って」と銘打ったコンサート。ウォンさんの音楽を聴いていると《遥かなる記憶》が蘇るという友人からの手紙にヒントを得たという。 最初に10分くらいの即興。ウォンさんのソロ・コンサートでは、最後に20~30分の即興をすることが多いけれど、この日は、ゲストが加わる構成の関係で最初にソロを持ってきたようだ。コンサートの終盤だと疲れていたり、あまりの気持ちよさに、爆睡してしまう人もいる。しかし今回のように、最初で10分くらいの長さだとその後のウォーミングアップのような感じで楽しめた。 続いてドビュッシーの曲を2曲演奏。ウォンさんがドビュッシーから大きな影響を受けているのは明らかだが、こうして改めて聴くと、演奏者の決意、自分のルーツを確認する作業のような印象を受ける。 ここから息子さんの美音志さんが登場。中学三年の頃から父親の音楽制作を手伝ってきて彼も独立して久しいが、映画『純愛』の音楽では多くの部分を担当したという。続いてピアノとギターのデュオ。父親とはちょっと違う、でも同じオリエンタルな響き。いずれも魅力的な旋律をもったオリジナルだが、ギターの繊細な音は、この午後の早いの時間にあまりにも気持ちよすぎて、しばし睡魔に襲われてしまう。やはり音楽にも聴くべき時間や環境というものがある。深夜から早朝にかけて、ひとりで聴きたい音楽なのだ。 休憩後は二胡奏者のジャー・パンファンさんがウォンさんと共演。レパートリーはジャーさんのものだ。来日して20年。ポップス、ジャズ、クラシック、民族音楽など、他ジャンルとの共演も多いジャーさんだが、ウォンさんとの組み合わせは、どこかジャズのような自由な対話を連想させる。彼が演奏する二胡を初めて生で聴いたが、その音は人間の肉声のように生々しく、そして躍動感溢れるものだった。 最後はウォン、ジャー、美音志の3人が揃ってステージに登場。ウォン&美音志が手がけた映画『純愛』からいくつか演奏。初めてサントラ盤を聴いた時、思わず涙が溢れそうになったが、この日はなぜかそうした身体の変化はなかった。別に音楽の出来が悪かったわけでも、感動しなかったわけではない。同じ音楽でも、演奏者を前にしたコンサートで聴くのと、見たことのない映画を勝手にイメージしながら聴くのとでは、受け取る側の印象が全く異なる。そのことを実感した一日だった。 PS:映画『純愛』は今年の夏の東京に続いて、08年1月に札幌で上映される予定。
by makotogotoh
| 2007-11-20 18:13
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