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The 14th Tribute to Tommy Flanagan @ OverSeas

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大阪の『OverSeas』で「The 14th Tribute to Tommy Flanagan」を聴いてきました。
メンバーと曲目は以下の通り。寺井尚之(p) 宮本在浩(b) 菅一平(ds)
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1st set:
1.50-21(Thad Jones)
2.Beyond the Bluebird(Tommy Flanagan)
3.Minor Mishap(Tommy Flanagan)
4.Embraceable You-Quasimodo(George Gershwin-Charlie Parker)
5.Lament(J.J.Johnson)
6.Rachel's Rondo(Tommy Flanagan)
7.Dalarna(Tommy Flanagan)
8.Tin Tin Deo(Dizzy Gillespie-Chano Pozo)
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2nd set:
1.Bitty Ditty(Thad Jones)
2.They Say It's Spring(Bob Haymes)
3.That Tired Routine Called Love(Matt Dennis)
4.Thelonica-Mean Streets(Tommy Flanagan)
5.Some Other Spring(Irene Kitchings)
6.Eclypso(Tommy Flanagan)
7.I'll Keep Loving You(Bud Powell)
8.Our Delight(Tadd Dameron)
Encore
9.With Malice Toward None(Tom McIntosh)
10.Strayhorn Medley:Flower is A Lovesome Thing/Chelsea Bridge/Passion Flower/Raincheck(Billy Strayhorn)
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2001年11月にトミー・フラナガンが死去してから、毎年3月と11月の年2回、寺井さんはフラナガンのトリビュート・コンサートを行なうようになった。そのトリビュート・コンサートも14回目となるが、私がこのトリビュートを聴くのは、今回で2回目。生前フラナガンが演奏した曲を中心に、寺井さんは独自の視点と解釈で演奏する。フラナガンのステージで頻繁に聴いた曲もあれば、個人的には一度も聴いたことのない曲もある。寺井さんは、フラナガンのアレンジに敬意を表しながらも、「なぞる」のではなく、ひとつひとつの曲に「魂」をこめていく。今回は3月のトリビュートということで、「春」にちなんだ曲が数多く取り上げられた。
私が「OverSeas」でトミー・フラナガンの演奏を聴いたのは1996年と1997年の2回。1996年はトリオで、1997年はソロだった。わずか2回だが、その時の強烈な印象は今も忘れられない。「OverSeas」で聴くフラナガンは、他のクラブで聴く演奏と全然違うよ、という噂は以前から聞いていたが、なかなか聴く機会がなかった。1996年に実際に聴いたが、その迫力は噂をはるかに上回っていた。それまで多くの名盤や他のクラブで聴いていたフラナガンの演奏、あれは何だったのだろう。1回の名ライブは、100枚の名盤よりもはるかに価値がある。その感動は一生ものだ。
以前の「OverSeas」では、バンドスタンドが入口近くにあった。寺井さんは演奏するフラナガンの背後に静かに立ち、師匠の両手の動きをじっと観察していた。寺井さんはもうひとつ重要な役割を担っていた。彼はただ観察するのではなく、ソロが終わってからの拍手の引率役でもあった。寺井さんが手を動かすだけで、クラブ全体に、割れんばかり拍手が鳴り響いた。その興奮は、まるでサッカー場のそれだった。
フラナガンが死去してから、「OverSeas」のピアノの後ろに遺影が飾られた。『Sea Changes』のジャケットに使われたJohn Abbottが撮影した写真だ。両者の立場は変わった。以前、師匠の両手を観察していた寺井さんを、今度は写真の師匠がじっと見守っている。しかし、写真のフラナガンは拍手をしてくれない。そのせいもあって、トリビュート・コンサートの拍手は、ちょっと上品すぎて、行儀がよすぎるようにも感じる。
1st setが約62分、2nd setが約85分。あっという間に約150分が間に過ぎた。どちらのセットもThad Jonesの曲で始まったが、この日(3月28日)はThad Jonesの誕生日だったからだろう。フラナガンの音楽から今も多くのことを学び続けるという寺井さんだが、彼が演奏する「With Malice Toward None」への入れ込み方は、師匠フラナガンのそれを上回っていると私は思う。フラナガンはこの曲を決まってステージの2曲目に演奏したが、寺井さんはこの曲に新しい魂を吹き込み、アンコール・ナンバーにした。天国のフラナガンにそのことを伝えれば、ちょっと不機嫌そうにフンと鼻を鳴らして、「じゃ、ちょっと演奏してやるよ」と言うだろう。むろんフラナガンの演奏は、きっと私の想像を超えた素晴らしいものに違いない。しかし、この曲に対する思い入れの強さは、寺井さんの方が上のような気がする。今日の演奏を聴いても、その気持ちに変わりはなかった。次回(第15回)のトリビュート・コンサートは2009年11月下旬に予定している。
by makotogotoh | 2009-03-29 04:11
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